友人を切った。
友人を切った。
20年程の付き合いがあった。
「俺は君ほど、彼の死を、割り切りできないわ」
この言葉が決め手になった。
感情を定量化、比較可能なものだと考える無能さと、
感情の表面をなぞるだけの軽薄さに、吐き気を覚えた。
許容範囲を狙った小さなヘイトをちりばめる。
彼の、いつもの、姑息なやり口だった。
彼の嫉妬心を煽っていたらしい、と、薄々感づいてはいた。
彼とバンドを組んだとき、彼は初心者だった。
音楽で貢献出来ないならせめて、仕切るくらいしなさいと、
リーダーという名目の世話係を押し付けた。
二年が過ぎたとき、彼はまだ初心者だった。
十年が過ぎ、やはり成長は無かった。
その間、音楽面で他者の話題に挙がったのは、
私が離れたあとですら、私の方が確かに多かった。
才能ではなく、技術の差だった。
数をこなし、テンプレの知識量を増やすことで得られる、単なる技術。
それを得る努力をせず、彼はただ、嫉妬した。
嫉妬心の克服は彼の問題だと、私は彼を、切って捨てていたのだろう。
それを本当に欲するなら、努力をすればよい。
努力が面倒ならば、そんな程度の欲など無視すればよい。
私は無意識に、文化系的実力主義のマッチョイズムで、彼を突き放し。
彼は出自たるチームスポーツマインドから、私の冷淡さにヘイトを募らせた。
鬱屈してしまった彼の言動を、許すことは無い。
鬱屈を強いた自分の振る舞いを、今後修正するつもりも無い。
別れ行く道とはこういうものだという、虚しさを、吐き出しておく。